世界初のリリックビデオとしてしばしば語られるのは、ボブ・ディランのドキュメンタリー『ドント・ルック・バック』のオープニング映像として撮影された『Subterranean Homesick Blues』(1967)だが、楽曲に合わせて歌詞を表示させる試みとしては、フライシャー兄弟が1920年代終盤の時点で「バウンシング・ボール」と呼ばれるカラオケ画面的なアニメーションを公開している。また全編をモーション・グラフィックスで構成したリリックビデオの起源としては、プリンスが1987年に発表した『Sign O' The Times』を挙げるべきだろう。プリンス自身は一切登場しないMVで、CGで描画された平台(フラットベッド)的な画面上に配置された文字が、フェードイン・アウト、拡大縮小、スクロールなど様々なアニメーションを通じて楽曲と同期させられている。